パリ五輪、敵は「時差」 テレビ各局7時間の壁に挑む 深夜早朝はネット中継でカバー

07-25 admin

パリ五輪の一部競技がスタートし、テレビ各局が熱戦を伝え盛り上げる五輪シーズンがやってきた。前回東京での夏季大会との大きな違いは時差だ。日本のメダル獲得が期待される種目の重点放送は従来通りだが、日本時間深夜・未明の種目をインターネット配信でカバーし、生中継と見逃し配信で視聴者の獲得を狙う。一方、放送権料の高騰で民放全体の五輪収支は2012年以降、夏季3大会続いて赤字。今大会も厳しい見込みで、五輪と放送の在り方が問い直されている。

未明まで高視聴率狙い

バレーボール日本男子キャプテンの石川祐希選手(左)と、フジテレビ系のアスリート応援ソングを担当する菅田将暉

「NHKと民放各社が協力して全面展開する。精いっぱい、熱い戦いをお届けして、皆さんに楽しんでいただきたい」。テレビ朝日の篠塚浩社長は今月2日の定例会見で、パリ五輪への意気込みを語った。前回の東京五輪と比べて盛り上がりに欠けるとささやかれるなか、西新常務は「基本、始まった日から一気に盛り上がるというのが最近のパターンだ」と前向きだ。

テレビ局にとって、五輪は一大イベント。東京五輪が行われた21年は、年間個人高視聴率上位30番組に、パラリンピックを含む五輪関連番組が19番組も入った(ビデオリサーチ・関東地区調べ)。今大会も「日本選手のメダル獲得への期待が高まれば高まるほど注目が集まる」(民放関係者)とあって、各局がバレーボールや競泳、柔道、卓球など人気種目の中継に力を入れる。

NHKも負けてはいない。計810時間をパリ五輪のテレビ放送に費やし、開会式直前の26日午後7時半には「パリオリンピック2024 開会式直前スペシャル」を現地から生中継。稲葉延雄会長は24日の定例記者会見で、「日本選手の活躍は子細漏らさず放送する」と意気込んだ。

いずれの種目も、日本とフランスでは7時間の時差があるため、日本時間の夕方から翌朝にかけてのタイムテーブルを中心に編成されている。

ほぼ全種目ライブ配信

テレビ朝日では、元プロテニス選手でスポーツキャスターの松岡修造が、11大会20年連続でメインキャスターを務める

スポーツイベントは地上波の生放送だけでなく、配信での視聴も盛んだ。ビデオリサーチによると、東京五輪では配信を視聴した人が全体の3割を超えた。今回のパリ五輪では時差のため、配信のニーズがさらに高まるとみられている。

民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」は、民放テレビの生中継番組を同時・見逃し配信するほか、テレビで放送されない競技も含め、全32競技329種目のほとんどをライブ配信する。

日本民間放送連盟の遠藤龍之介会長は「今、求められているサービスは地上波だけでなく、プラスアルファが絶対必要。地上波とティーバーを合わせた形で楽しんでもらえれば」(6月16日の定例会見)と話す。

NHKも、特設サイトや動画配信サービス「NHKプラス」での同時・見逃し配信を行う。

収支厳しく赤字は覚悟

各局とも盛り上げ準備に余念がない一方で、収支は厳しい状況にある。

具体的な金額は明かしていないが、民放連によると12年のロンドン五輪以降、リオ、東京と夏季3大会で民放全体の収支は赤字が続いている。ある民放関係者は「時差も円安もなく、メダルにも恵まれていた東京大会すら赤字だった」と振り返り、「今回のセールスは東京大会に及ばない。きっと赤字だろう」と嘆く。

民放連によると、18~24年の五輪4大会の放送権料は1100億円。NHKと民放連で構成するジャパンコンソーシアム(JC)は、26~32年の4大会の放送権を975億円で獲得している。以降は未定だが、世界的なスポーツイベントの放送権料の高止まりは解消される気配がない。

その中で、TBSの龍宝正峰社長は今月3日の定例会見で、「無料の放送メディアが五輪を放送する意味は、非常に大きい」と改めて意義を強調。「課題はあるが、しっかり応援していきたい」と述べた。(三宅令)

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